【礼拝説教】  「民族の形成」  辻 幸宏牧師

創世記9章18節〜10章、ヨハネの黙示録5章

 主はノアとその家族のみを残されて、すべての民を滅ぼされましたが、主はもう二度と全てを滅ぼし尽くすことはしないことを、契約という形において、私たち人間と約束して下さいました。そうした中、生命が与えられたノアとその家族は、箱舟を降りてすぐに主を礼拝しました(9:20)。しかしその後はどうであったのでしょうか?
 アダムとエバからすべての人類が始まったように、他のすべての民たちが滅ぼされた今、全世界に散らばる全ての民族は、ノアから始まります(9:18-19)。そのことが10章で示されます。しかしここには、現在の全世界の民族が記されているわけではありません。そして日本人もこのリストにはありません。ここで語られているのは、イスラエルを中心とする地域の人々です。しかし、モーセがこの創世記を記したとされていますが、当時の人々が思い浮かべる事の出来た全世界の人々がここに記されているということができるわけであり、ここに記されていない民もまた、ノアの子孫として形成されていったのです。
 そして洪水後の人は、洪水によって滅ぼされた人々と異なり主に仕えたのかと言えば、やはり「土の人」(「農夫」(20)と訳されている語)だったのです。主によって生かされ命の息が吹き入れられなければ人として歩むことは出来ないのです(参照:創2:7)。だからこそアダム以来の罪の性質も、ノアもその子孫も引き継いでいるのです。
 ノアはぶどう酒を飲み、酔い、裸になって寝るという醜態をさらします(21)。これは、確かに彼の罪によるものですが、聖書はノアの罪を責めるよりは、彼の失敗によってもたらされるカナンの父ハムの罪を指摘する前提として、聖書はノアの醜態を語ります。
 ここでのハムの罪は、@自分の父の裸を見たことと、A二人の兄弟に告げたことです。二人の兄が顔を背けていたこと、黙っていたこと(23)と対照的です。この様に興味本位で眺めること、そしてそれを人に広めていくことは、人間の罪の表れです。
 そして主はハムの息子カナンに対する呪いの言葉を語ります。確かに罪を犯したハムに対する主の裁きがあるのですが、同時に預言者的にカナンの裁きと呪いが語られます。カナンの罪については、旧約聖書を通じて語られている通りです。
 続けて聖書は、ノアの息子セム、ハム、ヤフェトの系図を語ります。これがノアと家族から全世界の人々が生まれたことを語る民族の系図となっています。
 最初にヤフェトの系図です。しかし聖書が系図を語る時、主が救いに導く民から遠い人々から語り始め、救いの民を最後に語ります。従ってヤフェトについては、セム・ハムの子孫に比べて簡潔な記述となっています。タルシシュ(4)は、ニネベに行くように主に命じられたヨナが、主に聞き従わず、出来るだけ遠くに行こうとして行った所です(ヨナ1:3)。
 続けてハムの系図です。ここでは主に敵対し、罪が指摘される人々が多く語られます。クシュ(6)はエチオピアのことです。フィリポがエチオピアの高官と出会い、聖書の解き証しを行い、洗礼を授けました(使徒8:26-)。エジプト、カナン(6)については説明しません。シェバ(7)はシェバの女王で有名です(歴代下9章)。このシェバは、アラビア半島の南西部、現在のイエメンのことです。他にバベル(10)、アッシリア(11)、ニネベ(12)、ペリシテ(14)、ソドムとゴモラ(19)も出てきます。
 「主の御前に勇敢な狩人」(9)は、肯定的にも否定的にも解釈できますが、私としては、後に「彼の王国」とあることから武力により権力を握り人々を支配した者であり、主を忘れ主を恐れずに人々を支配した人間的な罪の表れがここにあると思います。
 そして最後にセムの系図が記されます。聖書では常に主がお選び下さる重要な民の系図が一番最後に記されます。「エベル」(21)とは、ヘブルの語源とされ、アブラハムから始まるイスラエル民族のことを示し、主の救いの広がりが語られていきます。
 つまり洪水の後、主によって生かされたノアと家族は、船を降りてすぐに主を礼拝することにより生活を始めますが、彼らにも罪が残っており、すぐに罪が繰り返されていきます。そして現在の世界も、主を忘れ、罪に満ち、自己保身・自己防衛・他者への支配が横行しているのです。にもかかわらず、主はノアとの契約を守って下さり、全世界を滅ぼすことなく、ノアが選ばれ救われたように、ヘブル(イスラエル民族)を選ばれ、そしてキリストにより神様を信じる全ての民を選び、罪赦して神の国にお招き下さいます。そして神の国で、分かれた多くの民族が一つとなり、一つの神の国の民として、主を礼拝し、主を誉め讃える事が出来る者へと、私たちをお招き下さっているのです(参照:黙示5章)。

                                              (2005.2.20)
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