【ヨハネによる福音書連続講解説教】  辻 幸宏牧師

「モーセの言葉に聞け」  ヨハネによる福音書5章45~47節



ヨハネによる福音書5章45~47節

  5:45 わたしが父にあなたたちを訴えるなどと、考えてはならない。あなたたちを訴えるのは、あなたたちが頼りにしているモーセなのだ。5:46 あなたたちは、モーセを信じたのであれば、わたしをも信じたはずだ。モーセは、わたしについて書いているからである。5:47 しかし、モーセの書いたことを信じないのであれば、どうしてわたしが語ることを信じることができようか。」



Ⅰ.御子の地上での職務
 ユダヤ人たちは、自分たちの旧約聖書解釈により、目の前にいるイエス・キリストが約束のメシアではないと判断していました。このことを理由に、主なる神であるイエスは、ユダヤ人たちを訴えることも可能でした。しかし、主イエスは父なる神に訴えることはなさいません(45)。主イエスは御自身が世を裁く権能をもっておられるのです(5:22、9:39)。そのため人々の裁きを、父なる神さまに委ねることはなさいません。
 しかしここでは、今、御自身がユダヤ人に対する裁きを行うことも語られません。その一つの根拠は、主イエス御自身の与えられた働きにあります。つまり、主イエスが御子でありながら、人として遜って人となられたのは、人を裁くためではなく、罪の故に死に行く人を救い、神の子として神の国に導くためだからです(3:17)。
 しかし同時に、神の救いに結果として与らない民があるのであり、そうした人々は、主イエス再臨時、最後の審判において裁きを受けるのです。

Ⅱ.裁判官たる御子
 裁判所において一人の人を罪に定めようとすれば、その罪に対して告発され、事件として立証されなければなりません。裁判官が罪をでっち上げ、裁くことは出来ないのであり、警察なり、市民からの告発が必要なのです。主イエス・キリストは、まさしく最後の審判における裁判官そのものであり、御自身で罪を告発されることはなさらないのです。そして主イエスは、その告発者としてモーセを指名します。裁きの判断基準はモーセの律法(旧約聖書)であり、ユダヤ人たちは自ら頼りにしているモーセの律法によって罪に定められるのです(参照:9:39-40)。
 では、主イエスはユダヤ人たちの何を問題にされているか? 主イエスが言っておられるのは、彼らの行ないではなく、彼らの不信仰が裁きの対象となっているのです。なぜなら主イエスは、御自身の十字架によって人々の罪を赦し、救うために世に来られたのであり、行いに伴う悔い改めによって救われるのです(参照:8章の姦淫の女)。

Ⅲ.不信仰故の神の裁き
 行いによる罪を赦される審判者イエス・キリストの裁きの中心は、人々の不信仰です。3:18「御子を信じる者は裁かれない。信じない者は既に裁かれている。神の独り子の名を信じていないからである」。「裁かれている」と語るとおり、不信仰者の裁きは決定されています。その事実はまだ隠されていますが、最後の審判によって明らかにされるのです。つまり独り善がりな信仰を持っていたユダヤ人たちの罪は、最後の審判の場になり、彼らの信じて頼りにしているはずであったモーセの律法によって裁かれるのです(参照:申命記18:18~19)。つまり、父なる神さまがお遣わしになった御子イエス・キリストに従わないこと、信じないことにこそ、裁きの中心はあるのです。

Ⅳ.旧約聖書と新約聖書の関係
 最後に、旧約聖書と新約聖書の関係を確認しておかなければなりません。よく旧約と新約を、律法と福音と対立させて考えることをする人たちがいます。イエス・キリストによって旧約の律法が廃棄され、福音に生きなければならないと考えるのです。しかし主イエス御自身、「わたしが来たのは律法や預言者を廃止するためだ、と思ってはならない。廃止するためではなく、完成するためである。はっきり言っておく。すべてのことが実現し、天地が消えうせるまで、律法の文字から一点一画も消え去ることはない」(マタイ5:17)とお語りになっています。ここに連続性と、非連続性があるのです。まさに語ってきましたとおり、律法は連続的です。私たちは律法により罪を確認し、悔い改め、律法に従うものとされていきます。しかし同時に、律法による罪は、キリストの贖いにより罪が赦されたのです。キリストの贖いに与る者は、その罪がキリストの贖いにより赦されるのです。キリストの登場により、信じる者は救われることがはっきりと示されたのです。しかし、律法に逆らい、キリストを受け入れない人々は、不信仰の故に裁きを逃れることが出来ないのです。

                                              (2009.10.4)


COPYRIGHT(C) 2009 日本キリスト改革派大垣教会  ALL RIGHTS RESERVED



戻る