【クリスマスの説教】  「イエスの誕生」  辻 幸宏牧師



ルカによる福音書2章1〜7節

2:1 そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。
2:2 これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。
2:3 人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。
2:4 ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、
   ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
2:5 身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。
2:6 ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、
2:7 初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。
   宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。

〈参照:サムエル上17:12〉
   あなたが生涯を終え、先祖と共に眠るとき、あなたの身から出る子孫に跡を継がせ、
   その王国を揺るぎないものとする。

〈参照:ヨハネ7:41-42〉
   このように言う者もいた。「メシアはガリラヤから出るだろうか。
   メシアはダビデの子孫で、ダビデのいた村ベツレヘムから出ると、
   聖書に書いてあるではないか。」

〈参照:ミカ書5:1-2〉
   エフラタのベツレヘムよ
   お前はユダの氏族の中でいと小さき者。
   お前の中から、わたしのために
   イスラエルを治める者が出る。
   彼の出生は古く
   永遠の昔にさかのぼる。



 神さまを信じていない多くの人たちに取りましては、聖書の話しが神話であると思っている人も多いかと思います。しかし今日の御言葉は、イエス・キリストの御降誕が、史実に基づく真実であることを証ししています。
 皇帝アウグストゥスは、ローマ皇帝アウグストゥスのことであり、「崇高なる者」を意味する元老院から与えられた尊称です。ここで語られている皇帝アウグストゥスは、初代皇帝(在位BC31-AD14年)で、オクタヴィアヌスのことです。有名なカイザルがBC44年に暗殺された後に台頭し、皇帝に上り詰めたのです。そしてこの時代、ローマは領土を拡大し、イスラエルの地方もローマの属国化されて行きます。
 為政者が住民登録を行うのは、支配者が民衆に対して税金を取り立てるためであり、しっかりした支配者は、こうした統計をしっかり用いるのです。そして実際にこの人口調査を実施し、この地域の人々を治める働きを行うためにシリア州の総督として立てられたのがキリニウス(口語訳・新改訳クレニオ)です。彼は貧しい家に生まれましたが、軍功を掲げてBC12年にはコンスル(ローマ国家の最高の政務官・皇帝の右腕)にまで上り詰め、帝国の東部地方全体を治めていました。そして彼の統治下、BC6年頃とAD6〜7年頃の二回人口調査が行われたのであり、聖書が語る住民登録は、BC6年頃と考えられています。
 つまり主イエス・キリストの誕生は、神話物語ではなく、史実に基づく真実であることを、聖書は語っています。しかしながら、イエス・キリストの降誕が歴史的史実であることだけを語っても、「イエス・キリストが昔の偉人であった」と終わらせてはならないのであり、イエスは、旧約聖書においてイスラエルに約束されたメシア(救い主)であることを、聖書は証しいたします。
 4 ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。ヨセフは、ダビデがベツレヘム出身であったので(サムエル上17:12)、ダビデの子孫であるヨセフは(マタイ1:1-17)、ダビデの町ベツレヘムに上らなければならなかったのです。一方救い主が、ダビデの町ベツレヘムにおいて生まれることは、人々に伝えられてきていたのであり(ヨハネ7:41-42)、旧約の預言者によって語られたことでした(ミカ書5:1-2)。主イエスは、ガリラヤのナザレにおいて育ち、ナザレのイエスと言われていたのです。従って人々は、イエス様がベツレヘムにおいてお生まれになったことを知らずに語るわけですが、くしくもこの言葉により、イエス・キリストこそ、メシアであることを語っているのです。
 つまり、主イエス・キリストは、その誕生の次第が記されている今日の聖書個所において、史実的にも真実であり、そして旧約のイスラエルにおいて語られていたメシア(救い主)がお生まれになるとの預言が、成就したことを証ししているのです。

 主イエス・キリストは、確かに2000年前のクリスマスの日に、ベツレヘムにおいてお生まれになったのです。この事実を否定してはなりません。しかし同時に、このイスラエルにお生まれになられた救い主が、時代を超え、地域を越えて、私たちの救い主でもあることを、私たちは確認しなければなりません。このことは、私たちを救いに導いて下さろうとしている主なる神さまが、どの様な神さまであるのかを確認することにより、理解出来ると思います。主なる神さまは、天地万物を創造し、人間を神のかたち、神に似せて、さらに命の息を吹き入れることによって創って下さいました(創世記1〜2章)。その最初の人アダムから、全世界の人々が生まれているのであり、地上の全ての民が、主の被造物であり、主はその全ての民の救いを求めておられるのです。旧約聖書において、主なる神さまは、アブラハムとイスラエルを覚え特別に聖別して下さったのですが、それはクリスマスの日にお生まれになった御子イエス・キリストが、神さまの御計画に従って、お生まれになるために求めておられたからなのであり、そのために、特別にイスラエルを霊的に守り、導いて下さったのです。しかしイエス・キリストは、2000年前にお生まれになり、十字架と復活の御業が成し遂げられました。ですからイエス・キリストの誕生は、2000年前の遠くイスラエルにおいてなされたことですが、まさにここにいる私たちのため、あなたの救いのためになされた御業であることを覚えていて頂きたいのです。


                                              (2004.12.18)





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